医王寺住職に訊く柴又七福神巡拝のコツ


1 巡拝をより有意義にする心がけについてお訪ねしてみました。

Q. そもそも、「七福神めぐり」とはいったいどのようなものですか?
A. 仏教学博士「中村 元」先生の解説にあるように、俗信のひとつだと私は考えています。私たち仏教徒の立場からは、「仏教とは少し違うけれども、小さなお寺にも足を運んでもらえ、納経と布施の朱印授与によって仏教の裾野を広げることに寄与するので、霊場巡拝と同様に奨励する。」といったところでしょうか。巡拝のやり方も霊場巡拝と同じような方式がとられています。

Q. どんな意義があるのでしょうか?
A. 七福神に求めるものは人によって違います。どこからお詣りしてもかまわないという意味では、霊場巡拝とも少し違っています。この場合は、巡拝しながら七福神おのおのが持つ「徳(例えば当山の恵比寿天は「律儀の徳」があります)」が己の身につくように、とひたすら念じ、実生活でもそれらの「徳」を活かすことで、自分自身が幸福な人生を歩むことが目的であると、私は解釈しています。「商売繁盛」といったご利益(りやく)は、徳を身に纏(まと)った結果としてついてくるのではないでしょうか。

Q. スタンプラリーと納経朱印の違いを教えて下さい。
A. スタンプラリーは特定の地点に到達することが目的で、スタンプはチェックポイント通過の証明として自分で捺印します。納経朱印はお布施を添えて、写経(書写したお経)を祈願を込めて参拝奉納し、その善き行いを顕彰するため、寺院の側が朱印を授与するものです。多くの神社仏閣を参拝する人は、通常は納経帳(朱印帳)を使用します。

Q. なるほど、無料と有料の違いというわけではなかったのですね。
A. 有料無料というのは、物やサービスへの対価という意味で、商人の立場からいう言葉なので、この場合はあてはまるかどうか疑問です。もともとは、人それぞれの願いや祈りの内容により、喜捨金としての金額が異なる「お布施」であったのが、寺務の煩雑さや窓口の混雑解消のために、7ヵ寺で金額統一をしたからです。柴又の場合は、納経帳が300円、色紙が200円で合意しました。

Q. 柴又七福神オリジナル色紙(しきし)はどのような位置づけになりますか?
A. 納経帳の省略型です。より大切なのは、祈りと布施の心であることは、説明した通りです。しかし、近年お姿を印刷した色紙(しきし)や半截(はんせつ)などに朱印を捺し、表装後に軸装したりして装飾される方も増加してきました。お詣りの余録というわけですね。もともと、納経帳も表装が前提として作られていますので、元の意味をさほど失わずに納経窓口の混雑解消になると感じています。

Q. 七つ朱印の揃った色紙はどうすれば良いのですか?
A. ご本人の自由ですが、きちんと祈願を込めたのであれば功徳(くどく)あるものとして、祖末になさらない方がよいでしょう。色紙額に入れて飾る、色紙掛けに掛けて、句会や茶会の際床の間(とこのま)へ掛ける、色紙帳へ保管して鑑賞する、などがお薦めです。次の年も柴又に来られる方は、廻りはじめのお寺に、若干のお賽銭を添えてお焚き上げを依頼して納めてから、新しい色紙を受けるとよいでしょう。何年もリピート参拝される方は年号と日付をできるだけ裏に自書します。額装などされる場合も考えると、日付は表には書かない方が良いでしょう。

Q. ちなみに医王寺ではどんな縁起物を扱っていらっしゃいますか?
A. 恐縮ですが物売りには不熱心です、「ご本尊さまのお札」と「恵比寿天さまのお札」が500円、「お願い地蔵さん」が500円、「紙の財布守り」が100円、「蕎麦地蔵尊の紙札」が100円、そんな程度です。リピーターの方で新しいものをお求めの場合は、色紙同様、古いものをお焚き上げのお賽銭少額を添えて納め、新しいものを授与します。納められた古いお札は正月末の護摩法要で、お焚き上げをします。古い「お願い地蔵さん」の場合は、蕎麦地蔵前に安置します。

Q. 今までのお話ですと、観光よりも信仰活動という色彩が強いようですが、観光という観点からはいかがでしょうか?
A. 柴又七福神は団体で大型バスを使用して観光するには不適当だと思います。なにしろ道路が狭いうえ、道が不規則です。大型バスのための駐車場は江戸川土手にしかありません。帝釈天周辺を除けば、単なる住宅街の中にある寺院がほとんどで、あまり風情がないのが悩ましいところです。日本の街並みの特徴である無国籍感が溢れているのです。渥美清さんもお亡くなりになっておりますし、「フーテンの寅さん」の人気がいつまで続くのかが鍵になるのではないか、と感じています。


2 いろいろな巡拝のテクニックについてお訪ねしてみました。

Q. 巡拝する動機も人それぞれと思いますが、何かコツのようなものがありましたら、教えていただきたいのですが?
A. 混雑を上手に避けることです。平日がお奨めです。個人または少人数のグループで、時間や行程に余裕を持てる方法でゆったりと歩いてもらえるとありがたいですね。納経帳や色紙の朱印にこだわらないことも、テンポよく歩くコツのひとつです。朱印料やお賽銭などは、あらかじめ準備して、七つに小分けしておくとよいでしょう。窓口に並ぶ時は、色紙を封筒から出して、200円をそれに乗せて待つとよいでしょう。気持ちよくお食事のできる、雰囲気の良いお店を探訪するのもよい考えかもしれません。

Q. もしも団体さんなどとぶつかってしまい、窓口が混雑している場合はどうしたらいいんでしょう?
A. そのような場合でも、1時間ほど待てば解消するケースが大部分です。近くの別の神さまを先にする、近所を散策する、などしてうまくタイミングを外して下さい。一緒に行動すると、常に待たされることになります。

Q. どうも長時間にわたり、ありがとうございました。
A. どうぞ、ご参詣の皆さまが当山の恵比寿天さまのような円満な笑顔になられますよう、お祈りいたしております。(合掌)